「なんか綺麗」の正体

「なんか綺麗」

「なんか気持ちいい」

そう感じたデザインはありませんか?

その心地よさは、
目立つ装飾や特別なセンスだけで生まれているわけではありません。

文字の大きさ。

行間。

写真の切り取り方。

余白の幅。

情報の順番。

一つひとつは、意識しなければ気づかないほど小さな違いです。
けれど、その小さな調整の積み重ねが、
見た人の「なんか綺麗」「なんか気持ちいい」という感覚につながります。

一見、文字を並べただけに見えるこのサイトも、
細かなところまで調整しています。

以前、ある音楽家の方が、
完成に近い楽曲を、公開前に聴かせてくれたことがありました。

その曲について、

「ここが気になるから、調整したい」

と話されていました。

私には、その時点でも十分に素晴らしい楽曲に思えました。

でも、そこからさらに細かな調整が重ねられることで、
より自然に聴ける楽曲になっているのだと知り、
ふと自分の仕事と重なりました。

これまで、余白や文字の位置、行間に時間をかけながら、
「ここまでこだわっても、誰も気づかないのに」
と思うことがよくありました。

でも、目立たず、気づかれにくい部分ではあるけれど、
ちゃんと意味のある調整だったのだと、改めて納得できました。

数値だけでは整わない、
見た目のバランス

このサイトを例に挙げると、文字を入力しただけの状態で、そのまま載せているわけではありません。

見出しは、数値上は左端を揃えていても、文字の形によっては右に寄って見えることがあります。

まずは数値で揃え、
最後は目で見て、周囲とのバランスが自然に見える位置に整えます。

動かす幅は、ぱっと見ではほとんど気づかないほどわずかです。
けれど、その小さな差で、全体の見え方は変わります。

Before

数値上は揃っていても、

見出しが少し右に寄って見える状態。

After

文字の形に合わせて位置を微調整し、

左端が揃って見えるよう整えました。

また、フォントによっては、文字をそのまま入力しただけでは、文字と文字の間が必要以上に開いて見えることがあります。

その隙間を少し詰めることで、目が引っかからず、
すっと読める文字の並びに整えています。

Webサイトは、画面幅や表示環境によって見え方が変わります。
印刷物のように、すべての余白や文字の位置を細かく固定して整えることはできません。

それでも、最初に目に入る見出しや、写真と文字が並ぶ部分、ボタンまわりなど、印象を左右する箇所を優先して整えると、サイト全体がぐっと綺麗に見えます。

ミリ単位の差が
見えるようになった理由


こうした細かな違いに目が向くようになったのは、
デザイン事務所で働いていた頃の経験が大きいです。


完成したデザインを熟練の先輩に見せると、

「うーん、あと1〜2ミリ上げてみよう」

「全体を95%くらい縮めてみて」

と、細かな調整を指示されることがよくありました。

数値だけなら、ほんのわずかな差です。
でも、実際にやってみると、
キュッと締まったように感じて、全体が整うのです。


そんな調整を繰り返すうちに、
ある日を境に「あれ? 見える!」と思うようになり、
ミリ単位のズレにも気づけるようになりました。

私は、高校生の頃、スーパーでアルバイトをしていました。
閉店が近くなると、レジのお金を片づけるため、硬貨を種類ごとに10枚ずつ数えてまとめていました。
慣れてくると、数えなくても手の感覚でぴったり10枚に分けられるようになりました。

そのとき、
「同じことを繰り返していると、感覚でわかるようになるんだ。
人間ってすごい!」と思ったことを覚えています。

デザインで感じる余白や文字の位置の違和感も、
特別なセンスというより、
何度も調整を重ねる中で身についた感覚なのだと思います。

整えるのは、読む人のため

デザインでは、こうした小さな違和感を一つずつ取り除くように、
細かな調整を重ねています。

では、何のために、そこまで整えるのか。

読む人が、どこから読めばいいか迷わず、
内容そのものに集中できるようにするためです。

文字の位置や余白、写真と情報の関係が整っていると、
読むことに余計なストレスがかかりません。

読みづらいと感じたものは、
内容を理解する前に読むのをやめてしまうことがあります。

興味を持って開いたページでも、
少し読みにくいだけで閉じてしまうことはありませんか?

つくる側になると、読む側として感じていた小さなストレスを、
つい忘れてしまうことがあります。

自分が読む側として感じてきた読みにくさや分かりにくさを思い出すと、つくるときに何を整えるべきかが少し見えやすくなると思います。

なんとなく読みづらい。

なぜか整わない。

そんなときは、新しい要素を足す前に、
いったん読む側の気持ちに戻って見直してみると、
見えてくることがあるかもしれません。

たとえば、こんな視点で見直してみるだけでも、
整えどころが見えてきます。

最初に見たとき、
何をしている人・会社なのかが伝わるか。

いちばん伝えたい言葉や情報が、
ほかの要素に埋もれていないか。

見出し、本文、写真、ボタンへと、
目線が自然に流れるか。

情報どうしが近すぎたり離れすぎたりせず、
余白によって見やすく整理されているか。

すでにあるものを少し整えるだけで、
伝わり方は変わります。

「なんか綺麗」は、
こうした地味な作業の積み重ねで作られているのかもしれません。